こんにちは。
あさぎり会計事務所の税理士の山根です。
本日は、税務の落とし穴編第2弾です。
内容は、「短期前払費用」に関するお話しです。
では早速内容です。
━━━━━ 短期前払費用について ━━━━━・・・・・‥‥‥………
【はじめに】
節税対策の中で、最もポピュラ-であり、使い勝手が良いので、
利用されている方も多いのではないでしょうか??
確かに、使い勝手が良いですが意外な落とし穴がありますので、
まずは、概要を説明し、次に落とし穴について解説します。
【概 要】
その事業年度の経費に落とせるのは、原則、事業年度内に、債務
の確定したもの、つまり支払額の確定したものに限られます。
したがって、来期の費用を今期に支払っても債務が確定していな
いので経費に落とす事が出来ません。
この、「短期前払費用」の取扱いは、来期の家賃や保険料を払っ
た場合に例外的に経費として認めてもらえるという特例規定です。
例えば、3月決算で、3月に支払った家賃は通常4月分の前払な
ので来期の経費となり、今期では落とせないのが原則です。
これは前払金になって経費にならないからです。
当たり前に経費として処理しているかもしれませんが、この規
定があるから、例外的に経費になっているだけなんですよ。
更に経費で落としていい期間が最長1年先までという事です。
という事は、この特例を使う初年度は最高で24ヶ月分の家賃や保
険料が落とせるんですよ、これは相当節税になりますよね(2年目
以降は節税メリットはないですが・・・・・)
ただし、この特例を認めてもらう為には、次の要件が必要です。
○ 支払った日から1年以内に役務の提供を受ける場合
○ 支払を継続的に行う場合
○ 一定の役務の提供でその費用に変化のないもの
(例)家賃、保険料
保険料には、vol.3でお伝えした経営セ-フティ共
済や小規模企業共済の年払にも使えます。
ちなみに、この規定は、個人事業主さんもOKですからね
【落とし穴1】
上記で変化のない費用と表現しましたが、例えば、この様な場合
はどうでしょう??
「先生、今期は儲かってるから、先生の顧問料1年分払っとくよ-」
みたいな・・・・話です。
早めにお金を貰えるので私としては嬉しいですが、これはアウト、
ダメなんですねー
この規定は、役務の提供に変化のないものに限られています。
したがって、税理士業務の様に、毎月の業務の内容が一定してい
ないもの、変化のあるものは認められないんです。
【落とし穴2】
家賃の前払のケ-スで、次の様な支払は、この特例は使えません。
○ 社宅家賃の支払い
○ 一部を転貸する場合
この特例が適用出来ない理由として以下の様に通達が出ています。
「借入金を預金や有価証券などに運用する場合のその借入金の支払
利息のように、収益と対応させる必要があるものについては、たと
え1年以内の短期前払費用であっても、支払時点で損金の額に算入
することは認められませんので注意してください。」
何だか、難しいですが、支払と連動してヒモ付きの収入が発生す
る場合には認められないよ、という事です。
経費だけ1年分計上して、見合いの収入は計上しないというのが
許せないのでしょう。
したがって、社宅の場合には、必ず社宅家賃を徴収しなければな
らないし、親会社等が一括で賃貸して、一部を子会社、別会社に転
貸する様なケ-スでは見合いの収入が発生する為、この特例は適用
出来ませんから注意しましょう。
【落とし穴3】
落とし穴1までの話は、書籍などにも出ていますが、落とし穴2に
ついてはご存じでしたか??
さて、最後の落とし穴3は、私独自の意見なので、書籍やネット上
には出てないと思います。
勿体ぶりましたが、家賃を前払いする場合に大家が破産した時は
どうなるの?という事です。
節税の事ばかり気にしていると、思わぬ落とし穴にはまる場合が
あります。
1年分前払いをして1年経過するまでの間に大家さんが破産したら
どうなるのでしょう???
この件に関し、当グル-プの弁護士と意見調整しましたが、結論
的には、破産後に、その物件が「任意売却」になった場合には、前
払分や敷金は次の大家さんに引き継がれる可能性が高いので心配な
いが「競売」になった場合には、原則、前払分や敷金は切り捨てら
れるという事です。
大家さんが破産した場合、最悪は、「敷金」「前払分」が没収に
なるので、多額の前払をする場合にはよく考えてやりましょう。
【最 後 に】
最後に、この特例は支払者側の取扱いですから、貰う方(大家等)
は、受取時に1年分を売上にする必要は当然ないですからね・・・
たまに大家さんが、嫌がるとか、ダメだと言う話をお聞きしますが
大家さんが貰った時に1年分計上しないといけないと勘違いしている
からだと思います。
そう言う時には、上記の旨を説明して下さい。
この「短期前払費用」の規定は、どうせ翌年以降に支払わないとい
けないお金の単なる前払なので、比較的扱いやすい節税方法でしょう。
ただし、落とし穴もありますので注意しましょう!!