★あさぎり通信vol.15 税務の落とし穴~その7

おはようございます。あさぎり会計事務所の税理士の山根です。

さて、今回のテ-マですが、好評の「税務の落とし穴」シリ-ズです。

数ある節税方法の中でもシンプルで非常に効果の高い「養子縁組」の話です。

相続税対策~孫養子縁組に潜む影~

●概要

今更ですが、2015年に、実に50年ぶりとも言われる相続税の

改正(大増税)がありましたが、大きな変化が2つあります。

〇 1番目は、基礎控除額が6割に引き下がった事です

(例)4人家族(夫・妻・子2人)で夫が死んだ場合

(改正前)5000万円+1000万円×3人=8000万円

(改正後)3000万円+600万円×3人=4800万円

 この差は大きいですね!!!

〇 2番目は、相続で取得した不動産を売却した時の税金が、上
がった事です
この2番目に関してはあまり報道等されていないので、納税
資金を不動産の売却で予定されている方は注意が必要
です。
今回は長くなるので詳しい説明は省きますが、「相続税の取得
   費加算」の縮小と覚えておいて下さい。

(養子縁組の効果とは)

相続税の節税対策として「養子縁組」はよく使われるし、我々
もよく提案するのですが、その真意とは・・・
まず、何がイイかというと費用や手間がかからず大きな効果を
もたらすという事です。

効果の高い順に
〇 税率の引き下げ
〇 基礎控除額の増加
〇 生命保険金等の非課税枠の増加

特に、税率の引き下げに関しては、相続財産の多いご家庭では
効果が絶大です。
相続税は累進税率なので、相続財産が多くなればなる程、税率
が上がり、税金が高くなるのですが、養子縁組によりこれを緩和
する事が出来るからです。

  • 内容

さて、誰を養子にするかでは、長男(子)の配偶者か、孫を養
にすケースが多いのではないかと思います。

今回の落とし穴は未成年の孫を養子にした時の注意点です。

(1)落とし穴その1

孫の相続取得分については相続税が2割増しとなる。
⇒一代飛ばすためのペナルティ-でしょう

(2)落とし穴その2

まず前提として、祖父が孫を養子にすると親権は養親(祖父・祖母)に移動します。
相続が発生した場合の遺産分割協議には、原則として相続人全員が参加続する必要があります。 この時、相続人の中に未成年者(孫)がいたら、未成年者の(今回の様なケ-スでは養親)が、法定代理人として遺産分割協議に参加します。

では、今回の様なケ-スで、祖父に相続があった場合に遺産分割協議に参加するのは誰でしょうか??

配偶者(祖母)と子です。

子の中には未成年者(孫養子)がいます。

  祖母は配偶者としての立場(権利)と

  親権者(孫)の立場(権利)の2面性を持って参加します。

でも何か変ですよね!!
この様に両者の利害が相反する遺産分割協議は認められません。

そうなると、孫を代理する特別代理人という人を家庭裁判所に
申立て、更に、遺産分割の内容について許可を受けなければ遺産
分割を行う事が出来ないんです!!
しかも、遺産分割の内容については、孫の法定相続分を確保
れたものでなければ許可が下りないというのが裁判所の一般的な取
扱いになっています。

許可が下りないという事は遺産分割が出来なくなる。
更に、この許可が下りるのも1~2ヶ月以上かかる。

 ○ 相続税の申告期限は10ヶ月以内
⇒上記の様なケ-スでギリギリで遺産分割協議をすると申告
期限に間に合わない
⇒申告期限に分割が間に合わないと配偶者控除の特例等
が使えなくなる

⇒相続税が高くなる

 遺産分割がまとまらない
⇒これが一番ヤバイ、でかい
相続税の節税目的の為に、頭数を増やしただけのつもりが
その孫にも取り分が行ってしまうともめる可能性がある!

今回、(1)の話は有名ですが、本当にお伝えしたかったのは(2)
の話です。

(3)落とし穴1の対処方法 

一代飛ばせて相続が出来るので、ト-タル的な税金等を総合的に勘案して遺産分割等を行う

(4)落とし穴2の対処方法

  孫がすくすく育つのを待つ
⇒未成年の場合に問題となり、成人になれば関係ない

  遺言書を作成する
⇒遺産分割の必要がなくなる

  • 編集後記

今回のテーマも事前に知っていれば対処出来る話ですが、後で分
かるとトラブル必至です!!!

人間、後だしジャンケンには非常に抵抗感がありますからねー

また、弊所では、弁護士、司法書士と一緒に事案に対処する為に、
節税(税務)以外の事にも幅広く対応する事が出来るため、今回の
様な情報発信が可能となっています。

相続問題は、民法等が大きく絡む場合があるので税理士だけの意見
・知識で進めると思わぬ「落とし穴」があるかもしれませんので気
を付けて下さい。