あさぎり会計事務所の税理士の山根です。
10月1日からインボイス制度が始まりましたね。
職業柄、領収書に登録番号が記載されているか、ついつい目が行きます。
飲食店の他、コインパ-キングやタクシ-などの領収書には登録番号が記載されているものが予想以上に多いので感心しています。
逆に記載されていない施設等については今後は避ける様になるかもしれませんね。
しかしシステムの変更でソフト屋は儲かったんでしょうね! さて、本日のテーマですがインボイスに伴う「振込手数料」の取扱いです。
インボイスに伴う振込手数料の考え方
●概要
最近、お客さんから問い合わせが多いのですが、インボイス制度の導入に伴う「振込手数料の取扱い」の変更についてです。
具体的には、今までは、支払をする時に請求金額から振込手数料を差し引いて振込んでいた件です。
それが、インボイス制度の導入に伴い、「振込手数料を差引かないで下さい」と取引先から言われていませんか?
逆に、こちらが請求をする場合に、「振込手数料は差引かないで下さい」と相手方に通知していませんか?
何だか分かった様な分からない様な話じゃないですか?
では、この話の仕組みを、こちらが買い手(支払い)側で説明します。
仮に、振込手数料を差引いて支払うと、当然、振込手数料が免除になります。
免除になると言う事は得する訳ですから金額が少額とは言え売上(雑収入)になります。
売上になると言う事は、こちらが売り手側に振込手数料相当額の請求書(インボイス)交付する必要があります。
振込手数料なんかで、いちいち請求書なんか発行していたら事務負担が大変になるでしょ!
だから請求書の発行なんかしなくていいから「振込手数料は引かないで下さいね」という理屈の様です。
逆に、請求書を発行するのなら振込手数料を差し引いても問題にはならないと言う事です。
分かりましたか? でも、何か結局は便乗値上げですよね!
●特例
振込手数料の取扱いについては特例があります。
先程の例で、こちらが買い手側で説明します。
振込手数料を差引いて、売り手側が、差引かれた振込手数料を「売上値引」で処理してくれれば、
買い手側は、請求書(インボイス)の発行は不要となります。
ただし、売り手側からその様な処理はしないと言われれば、
それまでの話なので特例扱いにはなりません。
でもね--インボイス制度自体がそうなんですが結局は力関係なんですよね!
力の弱い方が負けで折れるしかないのが実情だと思います。
今回の件で言えば、買い手側の力関係が強ければ、
「振込手数料を差引けないのなら集金に来い」で問題解決です。
そもそも集金に伴う交通費の代わりに振込手数料を差引くと言うのが商慣習だと思います。
因みに、ガチガチな法解釈では次の様になっています。
商法516条では、債務履行の場所は「債権者の現在の営業所」
民法484(1)では「弁済は債権者の現在の住所」においてしなければならず、
民法485条で「弁済の費用」は債務者が負担すると定められていますので、
振込手数料は、「買い手」が支払うのが原則です。
今回、インボイスの導入に伴う「振込手数料の取扱い」については法的根拠が存在するのも事実です。
編集後記
今回の話はどうでしたか?
「売り手側」「買い手側」の立場によって、上記の法的根拠等や考え方をちゃんと理解し
相手側と交渉して下さい。 特に、「売り手側」だとすれば実質の値上げとなり、
件数も多ければ馬鹿にならないのでよく理解し検討して下さい。