あさぎり会計事務所の税理士の山根です。
あれだけ暑かった夏が嘘の様に涼しい毎日ですね。
私は、急な気温の変化で体調を崩してしまいました。
皆様も体調管理には気を付けてください。
暑いと言えば衆議院選挙の真っ最中ですが自民党がどうなるか注目ですね!
今回は投票に行こうと思っています。
所得税は高いので役員報酬は抑え会社に利益を残した方がいいは本当か
概要
よく税理士などから「所得税は高いので法人税を払って会社に利益を残した方が
得だ 」と言う話を聞かないですか?
所得税は最高税率55%で法人税は30%位なので20%も違うでしょ!と言う理屈です。
確かに会社で大きく事業を展開している方や展開しようと思っている方については
上記の答えは正解です。
税率の安い法人税を払った方が手残りが断然多くなります。
ただ、世の中には家族経営や社長1人なんて会社も沢山あります。
むしろその様な会社の方が多いのではないでしょうか?
果たしてその様な会社にも同じ事が言えるのでしょうか?
具体的な例で生涯手取り額を検証してみたいと思います。
概要
(前提条件)
〇 毎年の利益が3,000万円、2,000万円、1,500万円の3パタ-ンで試算(利益は会社の社保負担前)
〇 役員報酬は、利益の全額を支給する場合と年間840万円を支給する場合で試算
〇 事業期間は30年で試算
〇 30年後の会社の剰余金は退職金として清算
尚、高額な退職金は税務上否認される可能性が大きい為、安全な金額として、
功績倍率を3倍で計算
〇 退職金で清算出来なかった金額は残余財産として分配
*残余財産の分配は配当所得として課税される
〇 法人税の税率は30%で試算
〇 所得税計算上の所得控除は社保以外を50万円とする
以上から毎年の利益を全て役員報酬で支給した場合と年間840万円を
支給した場合の生涯手残り額は合計で幾らになるかを試算
途中計算式等を読むのが面倒な方は結果だけ見てください。
(利益3,000万円:役員報酬を全額支給する場合)
(1)毎年の社会保険の金額(折半分)
(82,149+59,475)×12ヶ月=1,699,488→170万円
*社会保険料は、役員報酬が139万円が上限
(2)毎年の役員報酬の金額
3,000万円-(1)会社負担分=28,300,000円
(3)毎年の役員報酬に対する所得税・住民税
A (2)-195万円(給与所得控除)-(1)-50万円
=24,150,000円
B A×50.84%-2,854,716=9,423,144→942万円
(4)退職金・残余財産
利益を全額役員報酬で支給している為0
(5)生涯手取り額
{(2)-(1)-(3)}×30年=515,400,000円
社保も含めた生涯税率42.7%
(利益3,000万円:役員報酬を840万円支給する場合)
(1)毎年の社会保険の金額(折半分)
(41,961円+59,475)×12ヶ月=1,217,232→121万円
(2)毎年の役員報酬の金額
840万円(月額70万円)
(3)毎年の役員報酬に対する所得税・住民税
A 840万円-194万円(給与所得控除)-(1)
-50万円=475万円
B A×30.42%-436,478=、1,008,472→100万円
(4)毎年の法人税
{3,000万円-(1)-(2)}×30%=611万円
(5)退職金A及び税金B及び手取り額C
A 最終月額報酬×在職年数×功績倍率
=70万×30年×3=6,300万円
B {A-1,500万円(退職所得控除)}×1/2
×50.84%-2,854,716=9,346,884→934万円
C A-B=53,660,000
(6)残余財産の分配金額A及び税金B
A 3, 000万円-(1)-(2)-(4)=1,425万円
1,425万円×30年-(5)A=364,500,000円
B 364,500, 000×90%(配当控除分)×55,945%-
4,896,716円=178,630,565円
尚、M&Aなどで株式の売却が出来れば20%の税金
(7)生涯手取り額
A 役員報酬分
{(2)-121万円-(3)}×30年=185,700,000円
B 退職金分
(5)C=53,660,000円
C 残余財産の分配分
(6)A-(6)B=185,869,435円
合計=A+B+C=425,229,435円
社保も含めた生涯税率52.7%
次に、利益2,000万円のパタ-ンです。
尚、途中の計算式は省略して結果だけ記載します。
(利益2,000万円:役員報酬を全額支給する場合)
生涯手取り額:359,700,000円
社保も含めた生涯税率40.0%
(利益2,000万円:役員報酬を840万円支給する場合)
生涯手取り額:312,707,961円
社保も含めた生涯税率47.8%
最後に、利益1,500万円のパタ-ンです。
同じく途中の計算式は省略して結果だけ記載します。
(利益1,500万円:役員報酬を全額支給する場合)
生涯手取り額:282,900,000円
社保も含めた生涯税率37.1%
(利益1,500万円:役員報酬を840万円支給する場合)
生涯手取り額:269,430,000円
社保も含めた生涯税率40.1%
(結果)
以上からいずれの場合も会社に利益を残した方がトータルの生涯手取り額は
少ないという結果となります。
え-認識と逆じゃないですか?
更に、将来貰える厚生年金も会社負担分を入れると相当な差額となり会社にお金を残さない方が断然有利です。
目先の税金を考えれば会社にお金を残した方が有利ですが、
今回の様に会社にお金が残り過ぎると長い目で見ると大損になります。
(まとめ)
最終的に税金に大きな差額が出るのが残余財産に対する税金です。
配当所得として総合課税される為、最高税率になります。
と言う事は残余財産を0にすればいいのですが、、、、、
その工夫として退職の時期を想定して段階的に役員報酬を増額していけば
退職金で残余財産を0にする事は可能です。
退職金は、最終的に所得が1/2になるので最高でも25%程度です。
しかし、退職の時期や死期なんて決めれますかね!
私の結論は、会社の形態にもよりますが、会社にもある程度お金を残してもいいですが、
〇 残余財産(内部留保)は退職金で無くせる金額までにする
〇 残りは役員報酬で全て支給する
がいいと思います。
そのお金で資産運用するとか元気な内にお金を使う方がよくないですかね!
今回のお話は、あくまでも社長1人でのシミレ-ションです。
他の親族役員に報酬が出せるとか相続税対策で個人から会社に財産を移転する場合には
結果や考え方は変わってきますのでご了承ください。
編集後記
今回の話はどうでしたか?
私の同業でも、馬鹿の1つ覚えの様に、所得税は高いので法人税を払って
会社に残しなさいと言う方多い様な気がします。
私は、社長や会社の方向性や考えなどを考慮してアドバイスする様にしています。
一番お伝えしたかったのは、「会社の方が税金が安く絶対に特だ!」という
固定概念は捨てた方がいいという事です。