あさぎり会計事務所の税理士の藤田です。
7月末に持続化給付金の給付実績が発表されました。
約276万件の給付実績
だそうです。
単純に国税庁の統計資料で比較してみると
法人税申告件数 約269万件
所得税の事業所得の申告件数 約374万件
上記の合計 約643万件
約643万件のうち276万件(42%)に支給が行われたことになります。
持続化給付金は、単月前期比で売上高が50%以上減少している事業者が対象になります。
国税庁の申告件数の内、42%もの事業者が前期比で売上50%以上下がった月があるということです。
新型コロナウィルスが日本経済に大きな影響を与えているのが良くわかります。
新型コロナウィルスの経済への影響はまだおさまりそうにありません。
今後、これまで以上に影響が大きくなっていくと思います。
今回は新型コロナウィルスによる経済の悪化を逆手に取り、節税対策を行うお話です。
この時期に考える事業承継(株価移転)
● 制 度 の 概 要
事業承継対策で株式の移転を考えている会社も多いのではないかと思います。
前述に記載したように新型コロナウイルスの影響により、一時的に業績が悪化した会社が多いと思います。
このような会社の株価は下がります。
株価が下がった時に株式移転を行うと節税対策になります。
会社の財務内容によって株価は変わってきますが、毎年1000万円の利益が発生し、
株価が1億円の会社の場合、1000万円の赤字になると15%程度株価が下がります。(会社の状況によって変わります。)
過去のメルマガ→ナンバ-34・ナンバ-106でも中小企業の株価について記載しているので参考にしてみてください。
● 実 務 上 の 留 意 点
中小企業の株価について
中小企業の株価の算出方法は、類似業種比準方式と純資産価額方式を用いて計算します。
会社の規模により、具体的な計算が変わってきますが、詳細は複雑なのでここでは省略します。
類似業種比準方式
類似業種比準方式は、国税庁が公表した類似業種比準価額を基に計算する方法です。
類似する複数の上場会社の株価の平均値を比準して計算します。
この方式で株価を算出する会社は、会社の財務内容が同じでも、類似業種比準価額が下がれば、株価が下がります。
この方式では、会社がコロナの影響を受けなくても、株価が下がる可能性があります。
過去の推移
(リーマンショック時と現在の比較)
H20平均 R2/4 増加率
建設業 121 257 212%
卸売業 155 251 161%
小売業 274 338 123%
不動産業 212 287 135%
その他の産業 218 345 158%
この10数年で類似業種比準価額が大きく上昇しています。
日本の4月~6月のGDPは、マイナス20%で戦後最悪の状況になっています。
今後、類似業種比準価額も下がることが予測されます。
尚、事業承継対策は、株式移転だけでなく、様々な問題を解決しないといけません。
事前に、コロナ渦における新しい事業承継対策を行う必要があります。
純資産価額方式
純資産価額方式は、評価会社の純資産を時価評価にして算出する方法です。
当たり前ですが、財務内容が悪化すれば株価は下がります。
債務超過になった場合には、株価が0円になります。
相続税精算課税について
平成30年に事業承継税制が利用しやすくなりました。
この時、贈与税の納税猶予を適用して贈与をした場合や、相続時精算課税制度を利用して贈与した場合には、
将来、贈与者の相続発生時に、この株式の贈与をしたときの価額を相続財産に加算して相続税を計算します。
今後どのようになるか分かりませんが、
財務内容が悪化し、株価が下がっている場合は、払わなくてよかった相続税を支払うことになる可能性もあります。
また、今回大幅に株価が下がった会社は、相続時精算課税制度の利用等を検討されてはいかがでしょうか?
編 集 後 記
今回の話はどうでしたか?
新型コロナウィルスによる経済悪化を想定できた人はいないと思います。
今後も、新型コロナウイルスだけでなく、様々な想定外なことが予測されます。
会社にとって、一個人にとって、常に何が起きても大丈夫なように備えておく必要があります。