こんにちは。税理士の山根です。
本日のテーマは、税務の落とし穴第5弾です。
「社会保険料削減スキ-ムに潜む影」と題してお話します。
■概要
最近、巷で「社会保険料削減スキ-ム」が流行っているようです。
仕組みは、簡単で、社長の毎月の給料を抑え、賞与で支払う方法です。
何故、この方法だと社会保険料が削減出来るかと言えば、賞与に対する社会保険料は一定額以上で頭打ちがあるからです。
具体的には、健康保険料は年度の累計で540万円
厚生年金保険料は1ヶ月当り150万円で頭打ちです。
つまりこれ以上の支給なら社会保険料がかからないんです。
ちょっと分かりづらいので具体例を見て下さい。
(例1)年収1,200万円を毎月100万円づつ支給の場合
健康保険料115,150円×12=1,381,800円
厚生年金保険料108,339×12=1,300,068円
会社・個人両者負担合計2,681,868円
(例2)年収1,200万円を毎月10万円、賞与で540万円を2回支給する場合
健康保険料
(毎月分)11,515円×12=138,180円
(賞与分)540万円×11.75%=634,500円
厚生年金保険料
(毎月分)17,124円×12=205,488円
(賞与分)150万円×17.474%×2回分=524,220円
会社・個人両者負担合計1,502,388円
賞与で支給すると何と社会保険料の削減額1,179,480円!!!
尚、役員賞与を経費にする為には、税務署に「事前確定届出給与」
の書類を事前に提出するのが前提です。
■落とし穴
このスキ-ムを知らなかった方は、どう思われましたか!!
100万円以上削減出来て凄い!!
でも何か変だと思いませんか??
一部の社会保険労務士やコンサルタントが、このスキ-ムは、「事前確定届出給与」を出しているんだから、このような支払をしても税務上何も問題ないと言ってる様ですが・・・
問題大ありでしょ!!
別に支払方法が変だから駄目と言っているんじゃないんですよ。
法人税法の条文(法律)に、報酬のうち、その役員の職務の内容、その法人の収益及び使用人に対する給与の支給状況、その法人と同種同規模の事業を営む法人の役員に対する報酬などからみて過大と認められる部分は経費にならないと書いてあるんです。
この中で、使用人に対する給与の支払状況という部分が問題となる可能性があります。
使用人に対して、給料はぐっと下げ賞与でたくさん支払う様な事をしていますか?という事です。
仮に、税務署がこの条文の理屈で否認してきたら、私は、反論出来ないし打破する自信はないです!!
先程の例で、役員賞与として1,080万円が否認されたら、社会保険料の削減なんか全く意味ないですよ。しかも、先程の例だと社会保険料の削減は表面的には100万円以上の効果がありますが、税効果(社会保険料は法人税、所得税等の経費となる)を考えると、実質的には、7割程度の削減、つまり、7~80万円程度の効果しかありませんよ。
7~80万円の効果だけで否認された時のリスクはデカすぎませんか!1,080万円の役員報酬が否認されたら追徴税額が延滞税等も含めると、少なくても300万円以上にはなります。
これを提案する社会保険労務士やコンサルタントは税法のことが分かっていないです。
こういうのを生兵法というんですよ!!
絶対に大丈夫だからと言われたら責任取ってもらえばいいかもしれませんがね。。。。。
■編集後記
会社の運営上、社会保険料の負担は重く、しかも年々金額も上昇しているので1円でも削減したい気持ちは会社経営をしている私にも良くわかります。が、繰り返しになりますが、今回のスキ-ムは私は絶対に反対です。
昔は節税の為に、法人にしましょうと簡単に言っていましたが、今は社会保険料の事を考えると安易に法人化出来ないし、逆に法人組織を解散して個人成りとでも言うのでしょうか、個人組織にするもの、社会保険料の削減には有効なのかもしれませんね。
しかし頭が痛い問題ですね-