あさぎり会計事務所の税理士の山根です。
平成27年度より、相続税の基礎控除額が大幅に下がり、相続税対策として贈与を活用されている方も多いと思います。
相続が発生した場合に3年以内の贈与は無効になる、相続財産に持ち戻さないといけないから早くしないと贈与が間に合わない、有効にならない!
ので
お父さんお願い長生きしてね!の神頼み
というケースがあると思いますが、この3年という数字だけが独り歩きして誤解されている方がいるので気を付けましょうという話です。
本日のテーマ
相続開始前3年以内の贈与の誤解
概 要
まず、この規定の条文は、相続税法第19条に以下の様に書かれています。(カッコ書き等は省略します)
相続又は遺贈により財産を取得した者が当該相続の開始前3年以内に当該相続に係る被相続人から贈与により財産を取得したことがある場合においては、その者については、当該贈与により取得した財産の価額を相続税の課税価格に加算した価額を相続税の課税価格とみなし、第15条から前条までの規定を適用して算出した金額をもって、その納付すべき相続税額とする。
そもそも、この規定は、相続の直前(3年以内)の贈与は、相続税の計算上は、贈与がなかったものとして、その贈与した財産を、相続財産に加算して相続税の計算をするという規定です。
ただし、ポイントは、冒頭の太字の部分です。
相続又遺贈により財産を貰わなかった人は関係ないのです。
加算の対象にならないのです。
具体例で確認してみましょう!
具 体 例
<前提条件>
○ 相続人、長男・次男の2人
○父の総財産(贈与する前)8,000万円
○ 毎年、長男及び長男の子(孫)に500万円づづ贈与し、4年後に父が死亡し、相続が発生
○ 遺産分割では、次男が残りの財産4,000万円(注)を相続する
(注)8,000万円-500万円×2人×4年=4,000万円
以上のようなケ-スで相続税の計算はどうなるでしょうか?
答えは、4,000万円-4,200万円(基礎控除額)で相続税はかかりません。
長男及び孫は、相続開始前3年以内に贈与で3,000万円(500万円×2人×3年)もらっていますが加算しなくていいんですよ。
何故なら、長男も孫も相続の時には1円も財産を取得してないからです。
しつこい様ですが、3年以内の贈与は、全てが加算の対象になるわけではなく、あくまでも、贈与を受けた人が、相続でも財産を貰った場合です。
編 集 後 記
今回の話はどうでしたか?3年以内の贈与は何でもかんでも加算の対象になるわけではないので、人ごとに、贈与による移転がいいのか、相続による移転がいいのかよくよく考えて、節税の事も考えながら財産の移転をしましょう。
また、3年以内の贈与でも、加算の対象にならない贈与が以下の様にありますので、効果的に組み合わせて贈与を進めましょう。
<生前贈与加算の対象とならない相続開始前3年以内の贈与>
○ 贈与税の配偶者控除
○ 住宅取得等資金等の非課税
○ 教育資金贈与の非課税