★あさぎり通信vol.28 不動産取得税の落とし穴(内装工事)

おはようございます。
あさぎり会計事務所の税理士の藤田です。

今回のテーマは、「賃借人であるテナントが内装工事をした場合に、賃貸人であるオーナーに不動産取得税が課税される可能性がある」という話です。

え!?賃借人が行った内装工事について、オーナー自ら不動産取得税を支払わないといけないの!!?

オーナーにしてみれば、何も取得していないのに、税金を支払わないといけないの!!!?

何か変だと思いませんか?

概要

 不動産取得税は、不動産を取得又は新築した場合に、不動産を取得又は新築した人が納付する税金です。この税金は、広島県が、税額を計算して課税します。つまり、自ら申告をしなくても課税される税金です。不動産を取得、新築された方は、分かるかもしれませんね。

不動産を取得、新築した場合に、不動産取得税が課税されるのは、理解ができると思います。が、今回のテーマは、賃借人が行った内装工事にも不動産取得税が課税される話です。(オーナーが内装工事をしていないものです。)

地方税法73条の2第6項において、「家屋が建築された場合において、・・・・一体となって家屋として効用を果たしているものについては、・・・・取得者以外の者が取り付けたものであっても・・・・不動産取得税を課することができる」 つまり、「課することができる」と地方税法でははっきり記載されています。ただし、「できる」規定なので、このままだと課税はされないです。

この地方税法に基づき、広島県では、条例を定め「課することができる」規定を「課する」に定めています。

 広島県条例第56条7

「家屋が建築された場合において、・・・・一体となって家屋として効用を果たしているものについては、・・・・取得者以外の者が取り付けたものであっても・・・・不動産取得税を課する。」

つまり、広島県においては、賃借人が行った内装工事については、不動産取得税を納付しなければなりません。

この規定においては、新築物件、中古物件、事業用物件、居住用物件の区分がされていない為、すべてが課税の対象になります。

 どのような内装工事が課税されるのか

内装工事でも、修繕みたいな内装工事には課税されません。地方税法では、「一体となって家屋として効用を果たしているもの」と定めており、広島県では「固定資産税評価基準において家屋に含まれるもの」取通(県)五章二(2)ア)と規定しています。

例えば、空調設備、パーテーション、コンセントの数、洗面台、床工事、天井の工事などです。一般的に賃借人がスケルトン(何もない状態)で賃借した場合に、行う内装工事が対象です。

 この不動産取得税の納税義務者は誰なのか

地方税法では、この不動産取得税の納税義務者は、「主体構造物の取得者」と定めています。つまり、建物の所有者です。また、地方税法では、建物の所有者が、賃借人と協議をして、賃借人に課税することができるとも定めています。

不動産取得税の納税をめぐるトラブルの解決方法

<賃貸人の立場>

不動産取得税をオーナーが支払うのか、内装工事をしたテナントが支払うのか事前に決めておかないとオーナーが不動産取得税を支払わなければいけなくなるリスクがあります。

このリスクを避けるために、賃貸借契約書で不動産取得税が課税された場合には、賃借人が納付すると定めておくことが大切です。

算出された不動産取得税の額については、正しい金額か確認する必要はあります。

<賃借人の立場>

地方税法、広島県の条例においても、賃借人は納付する義務がありません。地方税法では、「賃貸人と賃借人が協議の上、賃借人に課税することができる。」と記載しているだけなので、協議して合意しなければ、不動産取得税の納付義務がありません

ひょっとしたら、新築物件のテナントで、テナント側には本来支払い義務がないにもかかわらず、不動産取得税を納付された方がいるかもしれませんね。

編集後記

不動産取得税は、広島県が税額を確定して納付書を作成して通知してくる税金です。この為、何の疑問も思うことなく納付してしまっているのではないかと思います。

 私見ですが、中古の物件の場合、賃借人が行った内装工事について納付義務があるが、ほとんどのケースで広島県は、課税していない。つまり、不動産オーナーは不動産取得税を納付していないのが、実態ではないかと思います。

広島県の担当職員が新築物件のみ目をとがらして課税しているのではないかと思います。

このような、課税の決定は、課税の公平性に欠けるのではないですかね。