あさぎり会計事務所の税理士の山根です。
ようやく梅雨が明けましたね!
毎年、全国各地で豪雨の被害が出ていますが、
天災には勝てないので早期の避難、対策をするしかなさそうです。
自分の身は自分で守りましょう。
さて、以前にも書きましたが、
税務署が新年度(7月から)になり秋から年末にかけて税務調査が活発になってきます。
私のお客様も7月早々から税務調査になりました。
と言う事で今回の内容が税務調査のお役に立てれば幸いです。
概 要
先日、驚きの裁決事例が公表されました。
内容は、「代表者個人名義のカードで支払った飲食代金(交際費)に対して、
税務署が賦課決定した重加算税を取り消す」というものです。
個人のカ-ドを利用しただけで何で重加算税になるの!というのが驚きです!
結果的に、重加算税は取り消されて納税者が勝っていますが、
当初、税務署側は、「重加算税」を賦課決定(注)しています。
(注)税務署が、所得や税額を一方的に決める事(納税者は同意していない)
まず、この事件の前提として、税務調査の過程で、
納税者側は税務署からの指摘により、
交際費でない事は一応認めています。
認めてはいるので修正申告書を提出しています。
ここまではよくある話だし、納税者が納得しているのならば特に問題はないと思います。
問題なのは、その後です。
何と、税務署は次の2点の理由から、
「仮想隠ぺい」があったとして加算税の処分を重加算税として賦課決定しているんです。
(1) クレジットカ-ドが代表取締役の個人名義のクレジットカ-ドである事
(2)代表取締役が飲食等代金は業務に関連するものではなく、
個人で飲食等した代金であると申述していること
(1)の理由だけで、重加算税の要件である「仮装・隠ぺい」に該当する訳がありません。
問題は(2)の申述の部分です。
実は、裁決事例を全部読んでみると、この納税者は、一筆書いてるんですね!!
税務署の圧力があったのか、面倒になって書いたのかは分かりませんが書面に署名しているんですね!
「一筆重加(いっぴつじゅうか)」なんて俗語もあるぐらいですからね!
因みに、今回は「質疑応答記録書」という書類に署名、押印しているようです。
税務署は、これを盾に、重加算税を賦課決定したという経緯でしょう!
実 務 上 の 対 応
個人的な意見としては、よく重加算税が取り消されたな-と感心しています。
一般的に調書に署名・押印すれば自分で認めた事になります!
今回の件に限った事ではないですが、税務調査の過程で、
この手の調書等の署名・押印を求められる事があります。
まずは原則、この様な書類への署名・押印をしない事です。
調書への署名・押印の法的な義務は一切ありません。
税務署の言われるがままに署名しなくても大丈夫です。
今回の事件でも「個人名義のクレジットカードの利用」というだけで「重加算税」にするのは絶対無理です。
無理だからこそ調書を要求しているのではないでしょうか。
税務には「実質所得者課税の原則」というものがあります。
これは、名義は関係なく、実質(真)の所得者(利益を得る人)に課税するという事です。
だから名義が違っていても経費に計上する事は出来ます。
多くの方が、個人名義のカ-ドを使用するのは、
法人カ-ドだとマイル(ポイント)貯まらないから、というのが本音ではないでしょうか!
気持ちは分かりますが、個人名義のカ-ドを使用すれば、税務署から目を付けられ易くなるのも事実です。
それでも個人名義のカ-ドを使用するという方は、エビデンスをキッチリするしかないでしょうね!
最低限、誰と行ったのかは当然で、更に、内容の記載までないと対抗出来ないかもしれませんね!
編 集 後 記
今回の話はどうでしたか?
税務調査は、「性悪説」で実施されると思った方がいいでしょう!
税務調査官は疑うのが仕事です。
繰り返しになりますが、今日の内容でお伝えしたかった事は3点です。
〇 形式的に疑われる事は事前(日頃から)に解消しておく
〇 税務調査の過程で調書等の署名はしない
〇 安易な修正申告はしない
という事を覚えておいて下さい。