★あさぎり通信VOL.191 海外不動産による節税

おはようございます。

あさぎり会計事務所の税理士の山根です。

早いもので今年も残すところ2週間となり最後の配信となりました。

この時期になると税制改正について議論されます。

その中で「178万円の壁」の話はどうなったのでしょうか?

「将来178万円を目指す」と言う曖昧な形で合意したようですが、期限のない将来とはいつなんですかね!

前にも言いましたが責任の無い政党は好き勝手言えますね!

財源なき改革は進みません。

国家も企業と同じで入りと出のバランスを考えないと運営出来ません。

まあ適当な所の130万円位で落ち着くのではないでしょうか?

さて、本日は、令和2年度税制改正で節税封じとなった「海外不動産投資」についてです。

結論から言うと現状でも節税効果は期待できますので所得税の高い方は検討の価値ありだと思います。

●制度の概要

初めに、今更「海外不動産」かと思う方も多いかと思います。
令和2年度の税制改正で節税封じが行われたからです。
改正前の節税スキ-ム内容は下記の通りでした。
(スキ-ム)
1.高額所得者が海外の中古不動産を取得する
2.減価償却費を多額に計上する事によって不動産所得が赤字になる
3.1の本来の所得と2の不動産所得の赤字を相殺して税負担を軽減する
4.取得から5年超後に売却
(ポイント)
1.海外不動産は建物の比率が高い(8割位)為、減価償却費が多くなる
2.中古物件による耐用年数の簡便法により木造であれば最短4年で償却出来る
3.取得から5年超で売却した場合の譲渡所得税は税率20.315%
(具体例)
1.高額所得者(税率50%)が海外不動産を購入
2.物件は、木造で築30年(建物4,000万円、土地1,000万円)、利回4%
3.1年目~4年目までの不動産所得と税金
(1)収入-経費=200万円-1,000万円=▲800万円
(2)年間節税額=800万円×50%=400万円
(3) 節税額=400万円×4年=1,600万円
4.5年目の不動産所得と税金
(1)収入-経費=200万円-0円=200万円
(2)増税額=200万円×50%=100万円
5.6年目で購入金額と同額で売却した場合の税金
(売却代金-取得価額)×20%=(5,000万円-1,000万円)
×20%=800万円
6.6年間での差引節税金額
3.-4.-5.=1,600万円-100万円-800万円=700万円
これは、過去の遺物で税制改正前の話です。
税制改正によって上記3の不動産所得の赤字を通算する事が出来なくなりました。

●現状のスキーム

実は、改正内容を掘り下げると「国外中古建物から生じた損失のうち、耐用年数を簡便法により計算した国外中古建物の減価償却費は損失がなかったものとする。」になっています。
簡単に言うと、赤字の内、建物を簡便法により償却した部分は赤字から除外されるのです。
と言うことは、建物以外を簡便法で償却した場合の赤字は除外しなくていいので損益通算が出来る事になります。
それを可能にする為に、不動産会社が、建物本体と設備を分けています。
区分した設備は、簡便法で償却が出来るという仕組みです。
「不動産所得の赤字」が何でもかんでもダメな訳ではありません。
では、具体例の方が分かり易いので先程と同じ条件で説明します。
(具体例)
1.高額所得者(税率50%)が海外不動産を購入
2.物件は、木造で築30年(建物2,000万円、設備2,000万円、土地1,000万円)、利回4%
3.1年目~3年目までの不動産所得と税金
(1)収入-経費=200万円-750万円(注)=▲550万円
(2)年間節税額=550万円×50%=275万円
(3)節税額=275万円×3年=825万円
(注)建物の減価償却費:2,000万円÷22年=90万円
   設備の減価償却費:2,000万円÷3年(簡便法)=660万円
4.4~5年目の不動産所得と税金
(1)収入-経費=200万円-90万円=110万円
(2)年間増税額=110万円×50%=55万円
(3)増税額=55万円×2年=110万円
5.6年目で購入金額と同額で売却した場合の税金
(売却代金-取得価額)×20%=(5,000万円-1,550万円-1,000万円)×20%=490万円
 取得価額は、建物の未償却金額1,550万円と土地代金1,000万円
6.6年間での差引節税金額
 3.-4.-5.=825万円-110万円-490万円=225万円
改正前に比べると節税額が少なくなりましたが効果はあります。
当局も、国外中古建物とか国外中古不動産にしとけば現状のスキ-ムは成立しないのですが、、、、、、
現状は、「建物」に限定していますからね!
尚、設備の振分けについて、当局から指摘されても対抗出来るエビデンスは用意している様です。

編集後記

今回の話はどうでしたか?
これもいずれは改正になるかもしれません。
以前に比べると節税効果は低くなりましたが、私が興味を持ったのは物件の価格上昇率です。
投機的な部分は歪めませんが販売している不動産会社の販売実績によると、過去10年位の価額上昇率は、場所にもよりますが何と2~3倍となっています。
節税が出来て資産運用も兼ねています。
以前からお話していますがインフレに対応する為に、資産運用は必要です。
保険、株式、投資信託、不動産、更に、運用先を日本、海外など色々ありますがその内の1つではないでしょうか?
興味のある方は、弊所にお知らせください。